ワイワイ!ボドゲ時間

ボードゲームを快適に楽しむために:プレイ前にすり合わせたい「前提」コミュニケーション術

Tags: ボードゲーム, コミュニケーション, 前提, 期待値, トラブル防止, 人間関係, ファシリテーション

ボードゲームは、気の置けない家族や友人と過ごす楽しい時間を提供してくれます。しかし、時にはプレイ中にちょっとした違和感やすれ違いが生じ、場の雰囲気が気まずくなってしまうことも残念ながら起こり得ます。例えば、あるプレイヤーは勝ちにこだわる一方で、別のプレイヤーはワイワイと雑談しながら楽しみたいと思っていたり、あるプレイヤーはルールに厳密に従いたいが、別のプレイヤーは多少曖昧でもスムーズに進めたいと考えていたり、といったケースです。

このような軋轢やトラブルの多くは、プレイヤー間でボードゲームに対する「前提」や「期待値」が共有されていないことから生じることがあります。お互いが無意識のうちに持っている「これが普通だろう」「こう遊ぶものだろう」といった考え方の違いが、プレイ中に表面化し、誤解や不満に繋がるのです。

こうした事態を未然に防ぎ、誰もが快適にゲームを楽しむためには、プレイを始める前にいくつかの「前提」をすり合わせることが有効です。これは一種の予防的なコミュニケーションであり、あなたがファシリテーターとして場を円滑に保つための一歩となります。

なぜ「前提すり合わせ」が重要なのか

私たちは普段の生活の中で、様々な状況に対して無意識のうちに独自の「前提」を持っています。これはボードゲームにおいても同様です。

これらの前提は、どちらが良い・悪いというものではありません。しかし、異なる前提を持つ人々が集まって一つのゲームをプレイすると、お互いの言動が理解できず、ストレスに感じてしまうことがあります。

プレイ前に、こうした隠れた前提をできる限り可視化し、共有する機会を持つことで、お互いの考え方を尊重し合い、予期せぬ衝突を避けることに繋がります。

プレイ前にすり合わせたい具体的な「前提」の項目

では、具体的にどのような「前提」について、プレイ前に確認しておくと良いのでしょうか。参加するメンバーやゲームの種類によって重要度は変わりますが、一般的には以下のような項目が挙げられます。

  1. ゲームの目的・スタンス:
    • 「今回は勝ち負けにこだわって真剣にプレイしましょう」
    • 「今回は初めての人もいるので、和やかに楽しむことを優先しましょう」
    • 「新しい戦略を試す実験的なプレイにしましょう」
    • ゲームをどのように楽しみたいか、大まかな方向性を共有します。
  2. ルールの適用について:
    • 「ルールは厳密に適用しましょう。迷ったら説明書を確認しましょう」
    • 「進行を優先して、不明な点はその場で多数決で決めたり、分かりやすい方に解釈したりしましょう(ただし、後で確認はしましょう)」
    • 特に、ルールの細かい解釈が勝敗に大きく影響するゲームや、慣れていないゲームで重要な項目です。
  3. プレイ時間について:
    • 「〇時までには終わらせたいと考えています」
    • 「休憩をはさみながら、じっくり時間をかけてプレイしましょう」
    • 長時間のゲームの場合、終了時間や休憩のタイミングについて認識を合わせておくと、焦りやだるさを感じずに済みます。
  4. プレイ中のコミュニケーションについて:
    • 「プレイ中の雑談は自由にしましょう」
    • 「相手の手番中は静かに考えたいので、会話は控えめにしましょう」
    • 「他プレイヤーへのアドバイスや提案はOK/NG」
    • 「ブラフや交渉における嘘はあり/なし(ゲームの性質によりますが、念のため)」
    • プレイ中にどのようなコミュニケーションが許容されるか、確認しておきます。
  5. 長考について:
    • 「じっくり考えても大丈夫です」
    • 「時間制限を設けるなど、スムーズな進行を心がけましょう」
    • 考え込むタイプのプレイヤーがいる場合や、次の手番が長いゲームの場合に重要です。

「前提すり合わせ」のためのコミュニケーション術

これらの項目について、どのように参加者とコミュニケーションを取れば良いのでしょうか。いくつか具体的なアプローチを紹介します。

1. ポジティブな問いかけで始める

堅苦しく尋ねるのではなく、「せっかくだからみんなで楽しみたいね」「今日はどんな感じで遊びたい?」といった、和やかな問いかけから始めます。

このように、どちらが良い・悪いではなく、いくつかの選択肢を提示し、参加者の意向を引き出す形が良いでしょう。

2. あなた自身の考えを最初に伝える(ただし断定はしない)

場を作る側として、あなた自身がどのようなプレイを期待しているかを最初に伝えることも有効です。ただし、「こうすべきだ」と断定するのではなく、「私は〇〇な感じでプレイしたいと考えているのですが、皆さんはどうですか?」と、あくまで提案として提示します。

これにより、他の参加者も自分の意見を言いやすくなります。

3. 全員の意見を聞き、共通認識を確認する

一人だけでなく、できる限り参加者全員の意見を聞き出すように努めます。「〇〇さんはどう思いますか?」「〇〇君はこういうプレイスタイルだけど、今日はどう?」など、特定の個人に話を振ることも有効です。

そして、出た意見をまとめて、「じゃあ、今回は〇〇を優先して、△△については□□な感じで進めましょうか」と、その場での共通認識として確認します。完璧に全員の意見が一致しない場合でも、お互いの意向を理解しているだけでも、プレイ中のストレスは軽減されます。

4. 柔軟性を持たせる

すり合わせた前提は、あくまでその回のゲームにおける目安です。途中で状況が変わったり、やはり別のスタイルの方が楽しめそうだと感じたりすることもあります。

といった言葉を添えることで、後からの微調整も可能であることを示唆し、参加者の心理的な負担を減らすことができます。

プレイ中に「前提のズレ」に気づいたら

事前にどんなに丁寧にすり合わせても、プレイ中に予期せぬ状況が発生し、前提のズレが明らかになることもあります。そんな時は、その場で場の流れを止めずに、落ち着いて対処することが求められます。

プレイ中の対応は、その瞬間の状況判断が重要になりますが、根底にあるのは「お互いを尊重し、誰もが気持ちよくプレイできるようにしたい」という姿勢です。

まとめ

ボードゲームを家族や友人と心から楽しむためには、ゲームのルールや戦略だけでなく、そこに集まる「人」と「人との関わり」に意識を向けることが非常に重要です。

特に、プレイを始める前に「今回はどんな風にゲームを楽しみたいか」というお互いの「前提」や「期待値」を丁寧にすり合わせるコミュニケーションは、後々のトラブルを未然に防ぎ、ゲームをより円滑で快適なものにしてくれる強力なツールとなります。

今回ご紹介したコミュニケーション術を参考に、ぜひあなたのボードゲームの場で「前提すり合わせ」を実践してみてください。それはきっと、あなた自身がより心地よくプレイできるだけでなく、一緒に遊ぶ大切な人々との絆を深める、豊かな時間へと繋がるはずです。