ボードゲームの『もっと楽しい』を引き出す会話術:場の雰囲気と期待値を整えるヒント
ボードゲームは、家族や友人と楽しい時間を共有できる素晴らしいツールです。しかし、時にはゲームへの取り組み方や楽しみ方の違いから、ちょっとした「あれ?」や「もやっ」とした気持ちが生じ、場の雰囲気がぎこちなくなることもあります。
真剣に勝ちを追求したい人もいれば、ストーリーや雰囲気を楽しみたい人、あるいはただ皆と笑って過ごしたい人など、ボードゲームに求めるものは人それぞれです。こうした期待値やプレイスタイルの違いが、長考に対する焦り、過度な勝ち負けへのこだわり、あるいはルールの解釈に関する厳格さといった形で現れ、意図せず軋轢を生んでしまうことがあります。
この記事では、ボードゲームをより円滑に、そして参加者全員が「もっと楽しい」と感じられるように、コミュニケーションを通じて場の雰囲気と期待値を整えるためのヒントをご紹介します。
ゲームを始める前に:期待値のすり合わせと「目的」の共有
ボードゲームを始める前に、参加者同士で簡単な「すり合わせ」を行うことは、後の軋轢を防ぐ上で非常に有効です。これは堅苦しい会議ではなく、リラックスした会話の中で自然に行うのが理想です。
「今日の目的」を軽く確認する
例えば、「今日はこの新しいゲームを皆で体験してみることに重きを置こうか」「たまにはガチで考えて、最高の戦略を見つけ出すのを目指してみない?」「初めての人もいるから、エラーが出ても笑い飛ばしながら、まずは最後までプレイしてみよう」といったように、その日のゲーム会全体の空気感や目的を共有してみます。
全員が同じ目的を持つ必要はありませんが、それぞれの「こう楽しみたい」という気持ちをなんとなくでも理解し合うことで、「なぜあの人はあんな言動をするのだろう?」という疑問が減り、お互いのプレイスタイルを受け入れやすくなります。
ルールに対する「どのくらいの厳密さ」でいくか
特に複雑なゲームの場合、ルールの解釈や適用について意見が分かれることがあります。「今日は初めてだから、多少ルールを間違えていてもゲームを止めずに進めよう」「気になることがあったら、その都度しっかりルールブックを確認しよう」など、ルールの厳密さについても事前に共通認識を持っておくと安心です。
また、特定のカード効果や処理で疑問が生じた場合、「これはどう解釈するのが面白そうかな?」「一旦こう進めてみて、後で確認してみようか」といったように、一方的に決定するのではなく、会話を通じて方向性を探る姿勢が場を和やかに保ちます。
ゲームプレイ中:声かけとリアクションで場を温かく保つ
ゲームが始まってからも、コミュニケーションの機会はたくさんあります。特に、ペルソナの方が課題として挙げている「長考」「勝ち負けへのこだわり」「ルールの厳格さ」といった状況は、コミュニケーションで緩和できる可能性を秘めています。
長考している人への声かけ
長考はゲームの進行を遅らせるため、待っている側は少し焦りを感じることがあります。しかし、長考している本人も焦りやプレッシャーを感じている場合が多いです。
「大丈夫?ゆっくり考えてね」「焦らなくていいよ、納得いくまでどうぞ」といった肯定的な声かけは、プレッシャーを和らげます。また、「何か詰まっているところはある?」「もしよければ、一緒に状況整理してみようか?」といった、相手をサポートする意図での問いかけも有効です。ただし、これは相手が助けを求めている雰囲気がある場合に限ります。単に「早くしてよ」という雰囲気は避け、相手のペースを尊重する姿勢を示すことが大切です。
勝ち負けにこだわりすぎる人への対応
勝利を目指すことはボードゲームの醍醐味の一つですが、過度にこだわるあまり、不機嫌になったり、他のプレイヤーのプレイを批判したりすることがあります。
こうした言動があった場合、正面から否定するのではなく、まずはその「勝ちたい」という気持ちを理解する姿勢を見せます。「うんうん、悔しいよね、すごく分かるよ」「あの時の判断、確かに難しかったね」といった共感を示すことで、相手の感情を受け止めます。その上で、「でも、こういうハプニングがあるのもボードゲームの面白いところだよね」「このゲーム、展開が読めなくて楽しいね」など、勝ち負け以外のゲームの面白さに焦点を当てる発言を挟むことで、場の雰囲気を和らげることができます。
ルールの厳格さに関するコミュニケーション
ルールの適用について意見が分かれた場合、感情的にならず、落ち着いて話し合うことが重要です。まず、相手の主張をしっかりと聞きます。そして、「こう理解したのだけど、合っているかな?」と確認することで、誤解がないかを確認します。
最終的にルールブックを確認することになったとしても、「ごめん、ちょっと気になったから確認させてくれる?」「みんなで正しく理解したいから、ちょっと見てもいい?」といったように、個人的な追求ではなく、全員でゲームを円滑に進めるための確認であるというニュアンスで声かけをすると、角が立ちにくいでしょう。
場を円滑にするための「受け身」と「働きかけ」
特定の問題が発生した時だけでなく、日頃から場を円滑にするためのコミュニケーションを意識することが大切です。
ポジティブなリアクションを心がける
他のプレイヤーの良いプレイや、面白いハプニングに対して積極的にリアクションします。「今のすごいね!」「あはは、まさかそうなるなんて!」「その発想はなかったな」といったポジティブな声は、場の雰囲気を明るくし、参加者全員の満足感を高めます。
全員が発言しやすい雰囲気を作る
特定のプレイヤーだけが話しすぎたり、発言の機会が偏ったりしないように意識します。静かな参加者にも「〇〇さんはどう思う?」「今の状況、どう見てる?」など、自然な形で話を振ることで、全員がゲームに参加している感覚を持てるように促します。これは、直接的なファシリテーションというよりは、対話の「パスを回す」ような意識です。
まとめ:コミュニケーションは「楽しさ」を増幅させるツール
ボードゲームにおけるコミュニケーションは、単に情報を伝達するだけでなく、参加者同士の気持ちを繋ぎ、場の雰囲気を育むための重要な要素です。楽しみ方の違いやプレイスタイルの違いは自然なことですが、それらを乗り越え、全員が心地よく過ごすためには、意図的なコミュニケーションが役立ちます。
ゲームを始める前の期待値のすり合わせ、ゲーム中の肯定的な声かけや共感、そして全員が楽しめるような配慮ある会話は、ボードゲームの楽しさを一層引き出してくれるでしょう。コミュニケーションのヒントを参考に、家族や友人とのボードゲーム時間を、さらに豊かで「もっと楽しい」ものにしてください。