ボードゲームの場を円滑に保つ:あなたが『第三の視点』でできるコミュニケーション
ボードゲーム中の人間関係、なぜ第三者の視点が必要なのか
友人や家族と集まってボードゲームを楽しむ時間は、日常から離れた特別なひとときです。しかし、時にはゲームの進行中、プレイヤー間の意図しない言動やプレイスタイルの違いから、ほんの少しの軋轢が生じることがあります。例えば、ある人はじっくり考えてから手番を進めたい(長考派)、別の人はサクサクとゲームを進めたい、またある人は勝ち負けに強くこだわり、別の人はプロセスを楽しむことを重視するなど、様々なプレイスタイルがあります。ルールの解釈を巡って意見が分かれることもあるかもしれません。
こうした状況に直面した際、当事者として意見を主張することも一つですが、場の雰囲気全体を見渡し、プレイヤー間の橋渡し役となる「第三の視点」を持つプレイヤーがいると、その場はより円滑に進む可能性が高まります。
具体的なトラブル事例における第三者の立ち回り方
ボードゲーム中に起こりがちな、いくつかの具体的な状況を例に、第三者としてどのようにコミュニケーションを取ることで、場を和らげ、皆が楽しめる雰囲気を取り戻せるかを考えてみましょう。
長考するプレイヤーがいる場合
じっくり考えたいプレイヤーは、そのゲームの奥深さを楽しんでいるのかもしれません。一方で、待っている側は退屈に感じたり、ゲームが間延びすると感じたりすることがあります。
- 第三者からの声かけ例:
- 「〇〇さん、悩んでるね!面白い手があるのかな?みんな〇〇さんのすごい一手を楽しみに待ってるよ。」(長考を責めず、肯定的に捉えつつ、他のプレイヤーの期待感を示す)
- 「難解な場面だね!もしよかったら、今どんな選択肢で悩んでいるか、差し支えなければ少し話してもらえる?みんなで一緒に考えてみてもいいかもしれないね。」(考えを共有してもらう提案で、一方的な待ち時間を緩和し、協調性を促す)
- (場が重くなり始めたら)「一旦、休憩挟もうか?飲み物でも取りに行こう。」(物理的に状況をリセットする提案)
大切なのは、相手のプレイスタイルを否定せず、共感を示しつつ、場全体の時間感覚や他のプレイヤーへの配慮を促す視点を加えることです。
勝ち負けに強くこだわるプレイヤーがいる場合
ゲームである以上、勝ちたいという気持ちは自然なものです。しかし、そのこだわりが行き過ぎて、他のプレイヤーの発言や行動を厳しく批判したり、明らかに不機嫌になったりすると、場の雰囲気は損なわれます。
- 第三者からの声かけ例:
- (ゲーム中、特定のプレイヤーが苛立っている様子が見られたら)「このゲーム、本当に面白いね!勝ち負けもだけど、〇〇さんのあの時のナイスプレイ、見てて楽しかったよ!」(勝ち負け以外の、ゲーム中の良い点やプロセスに焦点を当てる)
- 「今回は残念だったけど、△△さんの作戦、面白かったね。次はどんな手に来るか楽しみだよ。」(ゲーム終了後、結果ではなく相手のプレイそのものに注目し、労いや次への期待を表現する)
- (もし批判的な発言が出たら)「色々な勝ち筋や考え方があるのも、このゲームの面白いところですよね。〇〇さんの戦略も理解できますし、△△さんの選択にも意図があると思います。」(双方の立場に理解を示し、多様性を認める言葉を挟む)
ゲームの結果だけでなく、ゲームを遊ぶ過程や、皆で集まっているという状況そのものに楽しさを見出すような言葉選びが有効です。
ルールの解釈で意見が分かれた場合
ボードゲームにおいて、ルールは非常に重要ですが、その解釈がプレイヤー間で異なることは珍しくありません。特に複雑なルールや、曖昧な記述がある場合に起こりやすいトラブルです。
- 第三者からの立ち回り方:
- 「一旦、ルールブックを確認してみましょうか。」(感情的にならず、客観的な根拠に立ち返ることを提案)
- 「この部分ですね。えっと、〇〇さんの解釈はこうで、△△さんの解釈はこう、ということですね。どちらの考え方も理解できます。」(双方の解釈を冷静に整理し、自分の理解を示す)
- (ルールブックで明確な答えが出ない場合)「このルール、ちょっと分かりにくいですね。今回はこういう解釈で進めて、もし後で公式Q&Aなどで確認できたら、次回からそうしましょうか。皆が納得できる進め方が一番だと思います。」(一時的な合意形成を促し、今後の対応も示唆する)
- (ゲームの根本を揺るがさない軽微なルールの場合、皆が納得するなら)「厳密には違うかもしれませんが、今回は皆で気持ちよく遊ぶことを優先して、この解釈で進めるのはどうでしょうか?」(ルールの厳格さよりも、場の雰囲気や合意を優先する選択肢を提示)
ルール確認は冷静に、そしてその解釈がゲーム全体にどのような影響を与えるかを皆で考慮できるよう促すことが、第三者には期待されます。
普段からできる、場を円滑にするためのヒント
これらのトラブルが発生した時に仲介役となるだけでなく、普段からのコミュニケーションでトラブル自体を予防し、場の雰囲気をより良く保つことも可能です。
- 多様なプレイスタイルへの理解を示す: ゲームの開始前や休憩中に、「皆でワイワイ楽しむのが好き」「じっくり戦略を練るのが面白い」「新しいゲームを知るのが楽しい」など、それぞれがボードゲームに求めている楽しさについて軽く話し合う機会があると、お互いのプレイスタイルへの理解が深まります。
- 期待値を合わせる工夫: 初めてのゲームか、慣れたゲームか。勝ち負けにどれくらいこだわるか。プレイ時間はどのくらいを想定するか。こうした点について、事前に軽く共有しておくと、後での「思っていたのと違う」というズレを減らせます。
- 「まあ、いっか」の精神を大切に: 特に友人間のゲームでは、厳密さよりも、皆で笑って楽しめることを優先する「まあ、いっか」というお互いを許容する精神が、時には非常に重要になります。あなたが率先して、多少のルールの間違いや非効率なプレイを大らかに受け入れる姿勢を示すことで、他のプレイヤーもリラックスしやすくなります。
自分が疲れないために
場の空気や人間関係への配慮は素晴らしい心がけですが、一人で全てを背負い込み、疲れてしまわないことも大切です。
- 全てを解決しようと思わない: あなたはゲームの進行役や審判ではなく、あくまで一人のプレイヤーであり、友人です。全ての衝突を完璧に解消することは難しい場合もあります。
- 適切な距離感を保つ: 問題が起きた際に介入するのは有効ですが、過度に干渉しすぎると、かえって煙たがられたり、あなたが疲弊したりします。状況を見極め、介入すべきか、少し様子を見るべきか判断することも重要です。
まとめ
ボードゲームは、単なるゲームシステムだけでなく、共に遊ぶ「人」とのインタラクションがあってこそ、その楽しさが深まります。長考、勝ち負けへのこだわり、ルールの厳格さといった、一見ゲームそのものとは関係ないように見えるプレイヤーの行動も、突き詰めればコミュニケーションに行き着きます。
あなたが「第三の視点」を持ち、プレイヤー間のコミュニケーションに少し意識を向けるだけで、ボードゲームの時間はよりスムーズに、そして心地よいものに変わる可能性があります。それは、高度なファシリテーション技術というよりも、「皆で楽しく過ごしたい」というシンプルな願いに基づく、ちょっとした言葉かけや立ち回り方なのです。
ぜひ、次回のボードゲームの時間に、この「第三の視点」を試してみてください。あなたのコミュニケーションが、きっと場の潤滑油となり、皆の「ワイワイ!ボドゲ時間」をより豊かなものにしてくれるはずです。