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ボードゲーム中の「プレイスタイルの違い」を心地よい場に変えるコミュニケーションヒント:理解と尊重のアプローチ

Tags: ボードゲーム, コミュニケーション, プレイスタイル, 人間関係, 尊重, ファシリテーション

ボードゲーム中の「楽しい」に潜む違いとの向き合い方

家族や友人と集まってボードゲームを囲む時間は、多くの人にとってかけがえのない楽しいひとときです。しかし、時にその楽しいはずの場で、プレイヤー間のちょっとした「違い」が原因で、場の雰囲気がぎくしゃくしたり、心に小さなわだかまりが生まれたりすることもあるかもしれません。

例えば、 * 一手を打つのにじっくり時間をかける「長考派」と、サクサク進めたい「直感派」 * 何としても勝ちたい「勝利追求派」と、プロセスや雰囲気を楽しみたい「体験重視派」 * ルールの隅々まで正確に適用したい「ルール厳格派」と、多少曖昧でも楽しく進めたい「柔軟派」

これらは、ボードゲームを遊ぶ中でよく見られる「プレイスタイルの違い」です。そして、これらの違いは、誰かが悪いわけではなく、ボードゲームに何を求め、どのように楽しみたいかという、プレイヤーそれぞれの自然な傾向から生まれるものです。しかし、お互いのスタイルを理解せず、期待値がずれたままだと、意図せず相手を不快にさせてしまったり、自分自身がストレスを感じてしまったりすることにつながります。

この記事では、ボードゲーム中に生じるこうしたプレイスタイルの違いを、単なる「困ったこと」として片付けるのではなく、お互いを理解し、尊重するためのコミュニケーションという視点から捉え直し、より心地よいゲームの時間を作るためのヒントを探ります。

なぜ「違い」が軋轢を生むのか?プレイヤー心理に寄り添う

プレイスタイルの違いそのものが問題なのではありません。問題が起こりやすいのは、その「違い」があることを認識せず、あるいは認識しても「なぜそうなの?」と相手の意図や背景に思いを馳せず、自分の基準や期待だけで相手の言動を評価してしまう時に発生します。

例えば、長考する人に対して、「遅いなあ」「早くしてよ」と感じるかもしれません。しかし、その人はもしかしたら、あらゆる可能性を真剣に検討することでゲームの奥深さを最大限に味わっているのかもしれません。あるいは、普段の仕事などで、じっくり考えて判断を下す習慣が身についているのかもしれません。

勝利に強くこだわる人がいるかもしれません。その人は、ゲームという明確なルールの下で最善を尽くし、目標を達成することに大きな喜びを感じるタイプかもしれません。彼にとって、ゲームは自己肯定感を高める場なのかもしれません。

逆に、ルールに厳格な人がいるのは、ルールを正確に適用することが、ゲームの公平性や本来の面白さを保証すると考えているからです。ルールが曖昧になると、ゲーム体験が損なわれると感じているのかもしれません。

これらの行動は、その人なりの「ボードゲームの楽しみ方」「ゲームに対する真剣さ」の表れであり、多くの場合、悪気があるわけではありません。しかし、自分のプレイスタイルと異なる行動をされると、「なぜそんなことをするのだろう」「空気が読めないな」と感じてしまい、それが小さなストレスや不満につながっていくのです。

「違い」を「心地よさ」に変えるコミュニケーション実践論

それでは、こうしたプレイスタイルの違いがある中で、どのようにすれば場を円滑にし、皆が心地よく楽しめる時間を作れるのでしょうか。重要なのは、「相手を変えよう」とするのではなく、「お互いを理解し、尊重する」という姿勢を持ち、そのためのコミュニケーションを試みることです。あなたが場の潤滑油となり、ファシリテーターとして立ち回る視点も有効です。

1. 相手の「違い」を観察し、理解しようと努める

まずは、相手のプレイスタイルを、善悪や優劣で判断せず、「自分とは違うスタイルなのだな」とありのままに受け止めることから始めます。そして、「なぜその人はそうするのだろう?」と、その背景にあるかもしれない意図や価値観に想像を巡らせてみます。

すぐに答えは分からなくても、このように相手の行動の裏にあるポジティブな側面や、その人にとってのゲームの楽しみ方に思いを馳せるだけでも、相手への見え方が変わり、感情的なわだかまりが軽減されることがあります。

2. 直接的な批判を避け、状況や自分の状態を穏やかに伝える

相手の行動に困惑やストレスを感じたとしても、それを直接的に非難するような言い方は避けるのが賢明です。「あなたはいつも遅い」「勝ち負けにこだわりすぎるのはやめてよ」といった言葉は、相手を委縮させるか、反発心を招くだけです。

代わりに、「I(アイ)メッセージ」に近い形で、状況や自分自身の状態、あるいは場の雰囲気を描写するように伝えてみましょう。

このように、主語を「あなた」ではなく「私」や「みんな」「このゲーム」などにすることで、相手を攻撃するのではなく、場全体を見ている、あるいは自分の状態を伝えているという印象を与えられます。ただし、これも言い方によっては責めているように聞こえることもあるため、穏やかなトーンと表情を心がけることが重要です。

3. 相手の考えを確認する質問をしてみる

場を円滑にするために、思い切って相手のプレイスタイルや考え方について、穏やかに尋ねてみることも有効です。これは「詰問」ではなく、「理解したい」という関心を示す「問いかけ」である必要があります。

このような問いかけは、相手に「自分のプレイスタイルは認められている」「関心を持ってもらえている」と感じさせ、心理的な安全性を高めます。また、相手が自身の考えやプレイスタイルについて言葉にすることで、他のプレイヤーも理解を深めるきっかけになります。自分が間に入ってファシリテーションする場合、それぞれのプレイスタイルの面白さを言葉にして場に共有する役割を担うこともできるでしょう。

4. 違いを認め合った上で、場の共通認識を作る

最も理想的なのは、プレイヤーそれぞれの「違い」を理解し、認め合った上で、そのゲームをどのように楽しむかについて、ゆるやかな共通認識を作ることです。これはゲームを始める前に軽く話しておくのが効果的ですが、ゲーム中盤で場の空気がぎくしゃくしてきた際に軌道修正として行うことも可能です。

このように、それぞれのプレイスタイルを否定せず、「どちらの楽しみ方もあるよね」と提示しつつ、その日のゲームでみんなが心地よく過ごせるような落としどころを提案するのです。これは、全員が同じプレイスタイルになるということではなく、それぞれの違いを許容し、お互いの快適なペースを尊重し合う関係性を築くことを目指します。

まとめ:違いは「敵」ではなく「彩り」

ボードゲーム中のプレイスタイルの違いは、避けられないものであり、それ自体は善悪ではありません。長考する人、勝利にこだわる人、ルールに厳格な人、それぞれがボードゲームの多様な楽しみ方の一端を示しています。これらの「違い」を頭ごなしに否定したり、自分の基準で相手を測ったりするのではなく、相手の意図や背景に寄り添い、理解し、尊重するコミュニケーションを心がけることが、心地よいボードゲームの時間を作る鍵となります。

あなたが少しファシリテーター的な視点を持ち、場の空気を観察しながら、必要に応じて穏やかな声かけや問いかけをすることで、プレイヤー間の小さな火種が大きくなるのを防ぎ、むしろそれぞれの「違い」がゲームの場に豊かな彩りをもたらすように促すことができるでしょう。

ボードゲームは、単にルールに従って駒を進めるだけではありません。それは、人間同士のインタラクションであり、コミュニケーションの場です。プレイスタイルの違いを乗り越えるための対話は、ゲームをより深く楽しむだけでなく、共に時間を過ごす人々との関係性をより豊かにすることにも繋がります。ぜひ、次回のボードゲームの機会に、今回ご紹介したコミュニケーションのヒントを試してみてください。