プレイスタイルの違いで起こる軋轢を調整するコミュニケーションヒント
ボードゲーム中のプレイスタイルの違い、その軋轢をどう調整するか
家族や友人とのボードゲームは、楽しい時間のはずです。しかし、時に参加者間のプレイスタイルやゲームへの向き合い方の違いから、小さな摩擦や軋轢が生じることがあります。例えば、じっくり長考したいプレイヤーと、サクサク進めたいプレイヤー。勝ち負けに強くこだわる人と、和やかに楽しむことを優先する人。ルールの解釈に厳格な人と、柔軟なハウスルールを受け入れる人など、多様な価値観が集まる場で、それぞれの「当たり前」がぶつかり合うことは少なくありません。
このような状況は、場の雰囲気を損ね、せっかくの楽しい時間を気まずいものにしてしまう可能性があります。特に、自分がその場の調整役になることが多い場合や、グループの人間関係を円滑に保ちたいと考える方にとって、これらの軋轢にどう対処すれば良いのかは、頭を悩ませる課題かもしれません。
この記事では、ボードゲーム中に起こりがちなプレイスタイルの違いによる軋轢に焦点を当て、それをコミュニケーションの力で調整し、皆が気持ちよくゲームを楽しむための具体的なヒントをご紹介します。
なぜプレイスタイルの違いが軋轢を生むのか
軋轢の原因となるプレイスタイルの違いは、単なる性格の不一致ではありません。そこには、ゲームに対するそれぞれの「期待値」や「価値観」が影響しています。
- 長考するプレイヤー: ゲームを深く理解し、最善手を尽くしたい、納得のいくプレイをしたいという思いがあるかもしれません。
- 勝ち負けにこだわるプレイヤー: ゲームの競技性や達成感を重視し、勝利から大きな喜びを得るタイプかもしれません。
- ルールに厳格なプレイヤー: ゲームの公平性や設計思想を尊重し、ルール通りに進めることに重きを置いているのかもしれません。
これらのプレイスタイルそのものは、決して悪いものではありません。それぞれのゲームの楽しみ方の一つです。しかし、異なるプレイスタイルの人々が集まったとき、互いの「当たり前」が理解されずにいると、「なぜそんなに時間がかかるのか」「なぜ楽しむより勝つことばかり考えるのか」「なぜそんな細かいルールにこだわるのか」といった疑問や不満が生じやすくなります。
具体的なプレイスタイルの軋轢と調整方法
ここでは、ボードゲームでよく見られるプレイスタイルの違いを例に、具体的なコミュニケーションや調整のヒントを提案します。
1. 長考によるゲーム停滞への対処
- 背景の理解: 長考は、ゲームを真剣にプレイしようとする姿勢の表れでもあります。頭ごなしに急かすと、相手は萎縮してしまうかもしれません。
- 調整役としての声かけ例:
- 「〇〇さん、じっくり考えてるね。何か情報が必要?ヒントを出すことはルール上可能かな?」
- 「少し休憩を挟む?飲み物でも取りに行こうか。」
- ターン終了時に「次の方は準備しておいてね」と促す。
- ゲーム開始前に「このゲームは少し考える時間が必要になる場面があるね。みんなで焦らず楽しもう」と共通認識を作る。
- ポイント: 長考そのものを否定せず、共感的な姿勢を示しつつ、ゲームの流れを意識させる言葉を選ぶことが重要です。
2. 勝ち負けへの過度なこだわりへの対処
- 背景の理解: 勝利への強い意欲は、ゲームを深く楽しむ原動力となり得ますが、それが過ぎると他のプレイヤーへの配慮を欠いたり、負けた際に不機嫌になったりすることにつながります。
- 調整役としての声かけ例:
- ゲーム中に白熱してきたら「みんな真剣で面白いね!でも、まずは楽しむのが一番かな」と場を和ませる一言を入れる。
- 特定のプレイヤーが過度に他のプレイヤーを攻撃するような言動をとった際に「ふふ、さすが〇〇さん、攻めるね!でも、みんなでワイワイやりたいね」とユーモアを交えつつ軌道修正を促す。
- ゲーム終了後、結果だけでなく「今日の〇〇のプレイ、面白かったね!」など、プロセスや好プレイに焦点を当ててポジティブなフィードバックをする。
- ゲーム開始前に「今回はワイワイ楽しむ感じでやろう!」など、ゲームの目的や雰囲気を共有する。
- ポイント: 勝ち負けへの意欲を否定せず、ゲームを「みんなで楽しむ時間」であるという側面を強調し、勝利以外の楽しみ方(好プレイ、ハプニング、会話など)に意識を向けるように促します。
3. ルールの厳格さ、解釈の違いへの対処
- 背景の理解: ルールを重視する姿勢は、ゲームの公平性を保つ上で不可欠です。しかし、過度に厳格すぎると、ゲームを難しく感じさせたり、柔軟性を欠いたりすることがあります。
- 調整役としての声かけ例:
- ルール解釈で意見が分かれた際に「一度ルールブックを確認してみようか。もし載ってなければ、今回はこう進めるって決めてもいいかな?」と、客観的な根拠(ルールブック)を提示しつつ、合意形成を提案する。
- 複雑なルールの場合、ゲーム開始前に「ここはハウスルールとして、今回はこう解釈するというのはどう?」と、あらかじめ共通認識や例外ルールを決めておくことを提案する。
- 「ルールを正確に理解してくれて、ゲームがスムーズに進むね、ありがとう!」など、ルールの厳格さを否定せず、その貢献に感謝を伝える。
- ポイント: ルールの正確性を尊重しつつ、ゲームの円滑な進行や参加者の理解度に合わせて、柔軟な対応や事前の合意形成を促すことが有効です。
自分が調整役としてできること:ファシリテーションの視点
これらの軋轢を調整し、場を円滑にするためには、あなたが「ファシリテーター」として振る舞うことが有効です。
- 客観的な視点を持つ: 特定のプレイスタイルを否定するのではなく、それぞれのプレイヤーがなぜそのように振る舞うのか、背景にある意図や価値観に想像力を働かせます。問題はプレイスタイルそのものではなく、それによって生じる「場の雰囲気の悪化」や「特定のプレイヤーの不快感」にあると捉えましょう。
- 中立的な立場を保つ: どちらか一方の肩を持つのではなく、全ての参加者が気持ちよくゲームを楽しめる状態を目指すという目的意識を持ちます。
- 言葉選びに配慮する: 否定的な言葉や命令的な口調は避け、「~してみない?」「~はどうかな?」といった提案型・問いかけ型の優しい言葉を選びます。ユーモアを交えるのも効果的です。
- 沈黙を恐れない、しかし放置しない: 軋轢が生じた際にすぐさま介入する必要はありませんが、場の空気が悪化したまま放置せず、適切なタイミングで声をかけ、状況を打開しようと試みます。
- 事前の「期待値のすり合わせ」を促す: ゲーム開始前に、「今日は初めての人もいるから、まずはルールを覚えながらゆっくり楽しもう」「勝ち抜き戦で、今回は勝利にこだわってみよう」など、ゲームの目的や雰囲気をみんなで共有する時間を設けるだけでも、後の軋轢を減らすことができます。
まとめ:違いを認め、コミュニケーションで楽しさを育む
ボードゲーム中のプレイスタイルの違いは、参加者の数だけ存在する可能性があります。長考する人、勝ち負けにこだわる人、ルールに厳しい人など、様々なスタイルは、それぞれがゲームに対して真剣に向き合っている証拠でもあります。
大切なのは、これらの「違い」を否定するのではなく、お互いのプレイスタイルやゲームへの向き合い方を理解しようと努め、必要に応じてコミュニケーションで調整することです。あなたがファシリテーターとして、具体的な声かけや提案を通じて場を円滑に保つことで、誰もが安心して、それぞれの方法でボードゲームの時間を最大限に楽しむことができるようになります。
プレイスタイルの違いを乗り越え、より豊かなコミュニケーションが生まれることこそが、「ワイワイ!ボドゲ時間」の醍醐味と言えるでしょう。ぜひ、今回ご紹介したヒントを参考に、次のボードゲーム会をさらに素晴らしい時間にしてください。